IFA国際アームレスリング連盟の公式ルールブックが公開されました。
本ルールブックに記載されている主要な部分、および、全てのワーニング・ファールに関する部分を翻訳します。
なお、原文と翻訳に齟齬があった場合は、原文(英文)の記載が公式ルールとなります。
訳責:JAWAレフリー委員長 上岡岳
1.レフリーの役割
1.1.レフリー組織(JAWAではレフリー委員会)
レフリー組織はレフリーのための国際教育プログラムを担当し、最新ルールの情報を普及しなければならない。
レフリー組織はヘッドレフリーを任命しなくてはいけない。
1.2.ヘッドレフリー(JAWAではIFA国際レフリー|不在時はJAWA1級レフリー)
ヘッドレフリーはトーナメントテーブルへの各レフリーの配置を決定する。
ヘッドレフリーは試合前に短いレフリーミーティングを行う義務がある。
ヘッドレフリーは試合中に各レフリーのチェックと評価を担当する。
ヘッドレフリーはプロテストに対する最終的な責任を持つ。
1.3.トーナメントレフリー(実際にテーブルにつくレフリー)
トーナメントレフリー(アシスタントレフリーも)は次の服装でなくてはならない。
白黒ストライプのレフリーウェア・黒のパンツ・黒の靴
トーナメントレフリーは最新のIFAルールを理解しておく義務がある。
試合中だけでなく、試合会場でも公平性・中立性を保つ義務がある。特定の選手やその家族・友人に情報を与えてはならない(試合会場での選手との会話の禁止)。
トーナメントレフリーはアシスタントレフリーとテーブルにつく。アシスタントレフリーはセットアップ時のリストストレートおよび試合中のエルボーファールおよび自分側のピンラインのみを監視する。
アシスタントレフリーは声を発せず、ハンドサインのみを行う。
2.トーナメントのルール
2.1.選手の振る舞い
選手はトーナメント開始の15分前には試合場所に集合しなくてはいけない。
選手は競技をする腕にいかなるものも着けることはできない。ただし、宗教上の理由のある女性に限り薄手のカバーを腕に着けることができる。
選手の過度にスポーツマンシップに反する言動は、退場の対象となる。
3.競技ルール
3.1.ダブルエリミネーション
公式戦はダブルエリミネーションで実施され、選手は2回敗退で失格となる。
3.2.ガイドライン
長髪の選手は髪を束ねなくてはならない。
帽子をかぶることは許可されない。ただし宗教上の理由がある場合に限り、つばのない帽子類をかぶることができる。
選手はトーナメントレフリーの審判に対し抗議をすることがでる(プロテスト)。プロテストは次の試合が始まるまで有効で、プロテスト料を持ったチームリーダーとともに行う必要がある。
プロテストが否認された場合、プロテスト料は返金されないが、承認された場合は返金される。
3.3.セットアップと試合の開始
3.3.1.セットアップは両者のリストストレートおよび親指の第一関節が見える状態にならなくてはいけない。
3.3.2.相手がセンターを確保できないほどのバックプレッシャーを与えてはいけない。
3.3.3.ショルダーラインは競技台と平行でなくてはならない。左右の肩の高さに差がある構えは許可される。
3.3.4.グリップと顎・胸・肩との間に拳一つ分の隙間がなくてはならない。
3.3.5.試合開始は「レディー・ゴー」の「ゴー」のみで開始され、「ストップ」のみで停止される。
3.3.6.「ピン」とは手首のラインがピンラインを下回るかタッチパッドについた状態を言う。
3.3.7.競技中は足を地面から離すことができる。ゴーの前は片足だけ地面から浮かせ、競技台の脚にかけたり巻きつけることができる。相手側の競技台の脚に足をかけるためには、相手の同意が必要。
3.3.8.競技者が負傷した場合もダブルエリミネーションシステムには名前が残る。棄権の有無は別とし、怪我をして失格とはならない。
3.3.9.試合に時間制限はない。
3.3.10.競技者両者の同意があれば、ストラップ、レフリーズグリップ、レフリーズグリップのストラップで試合を開始できる。
4.競技公用語
選手は競技公用語を理解する義務がある。
5.ワーニング
5.1.「ゴー」の前にスタートをするとアーリースタートとなりワーニングとなる。
5.2.セットアップ時のレフリーの指示(ショルダーストレート・リストストレート・サムズダウン・エルボー・センター)に三度従わない場合はワーニングとなる。
5.3.ペグを離すと試合は止められずにワーニングとなる。ペグを離したことが有利になった場合(ウィナーポジション)、試合は止められファールとなる。
※ワーニング二回で一回のファールとなり、二回のファールで敗退となる。
6.ファール
6.1.エルボーファール
肘がエルボーパッドから浮くとファールとなる。ただし、前腕や上腕三頭筋がエルボーパッドと接触している場合はファールとならない。
肘がエルボーパッドの外にでるとファールとなる。
6.2.インテンショナルファール
「ゴー」のあと意図的に握り手を離すとインテンショナルファールとなる。インテンショナルファールは次の場合にも適用される。
・指が相手の拳を離れ握りこぶしを作った状態からのスリップアウト
・指だけを持たれた状態からのスリップアウト
6.3.デンジャラスポジションファール
腕の付け根がエルボーパッドより低い位置になると、レフリーから「アップ」の指示が出る。アップの指示が出てから2秒(指示+2秒で合計3秒)経過しても改善されない場合、デンジャラスポジションファールとなる。
6.4.オーバーセンターラインファール
競技者の肩がセンターラインを超えた場合ファールとなる。
6.5.身体との接触
グリップが顎・肩・頭と接触した場合ファールとなる。
6.6.コンシデンシャルファール
相手がファールになるような故意の動作はファールとなる。
※相手の肘を押し出す動きなど
6.7.レフリーズグリップでのファール
レフリーズグリップで「ドントムーブ」が指示された後に、あらゆる動作(上半身・下半身ともに)が禁止され、動くとワーニングとなる。また、「レディ」から「ゴー」の間に動くとファールとなる。
6.8.ストレートアームファール
肘を完全に伸ばした状態になるとファールとなる。
6.9.スポーツマンシップに反する言動
スポーツマンシップに反する言動はファールの対象になり、過度の場合はヘッドレフリーにより退場が命じられる。
6.10.ルーザーポジションファール
ルーザーポジションでのファールは敗退となる。
ルーザーポジションとはピンラインよりも2インチ上まで倒された状態で、判断の基準はペグの高さが適用される。
6.11.ノーコール
両選手に同時にファールが発生した場合、試合は止められるが両者にファールは宣告されない。
6.12.三十秒レスト
ファールを宣告された後、30秒の休憩をとることができる。
7.レフリーズグリップ
7.1.「グリップ」のコールから30秒経過してもセットアップが決まらない場合、レフリーズグリップとなる。
7.2.レフリーズグリップの手順は以下の通り
①トーナメントレフリーにより握り方が「オープン」または「クローズ」かが確認される
②アシスタントレフリーが両者の手首をセンター位置で固定する
③トーナメントレフリーは両者のショルダーストレートをとり、「ドント・ムーブ」を告げる
④トーナメントレフリーは両選手の親指を交差させ、どちらから先に指を閉じるか宣言して片側の選手の指を閉じる
⑤一人目の選手の指が閉じられた時点で、アシスタントレフリーは手首の固定を離して元の位置に戻る
⑥もう片方の選手の指が閉じられたら、「レディー・ゴー」で試合を開始する。
8.ストラップマッチ
8.1.故意によらず握り手がスリップアウトした場合はストラップマッチとなる。
8.2.ストラップ装着の手順は以下の通り
①トーナメントレフリーは選手に肘を置くように「エルボー」と告げる
②トーナメントレフリーは両者の肘の位置を調整して手の高さを合わせる
③アシスタントレフリーはストラップを巻く補助を行う
④トーナメントレフリーは手の甲が自分側にある選手からストラップを巻き始める
⑤トーナメントレフリーはストラップを巻く手首の位置を「アップ」または「ダウン」で選手に確認する(上下幅は手首のラインから1インチ以内)
⑥手首にストラップを巻くときに、トーナメントレフリーはゆるみがないか確認をする
⑦二人目の選手の手首にストラップがまかれた後、ストラップの先端を手首と手首の間をくぐらせる
⑧ストラップの締め付け強度はトーナメントレフリーがコントロールするが、両選手の同意があった場合のみ、さらに締めるまたは緩めることができる
⑨ストラップが巻き終わると、選手はグリップを開始する
9.ハンドサイン
9.1.ワンワーニングは指を一本立てて選手に見せる。
9.2.ツーワーニングは指を二本立てて選手に見せる。
9.3.ワンファールは一本の指でファール側選手の地面を指す。
9.4.ツーファールは二本の指でファール側選手の地面を指す。